2028年に誕生してから100周年を迎えるミッキーマウスは、知らない人がいないというくらい知名度が高いキャラクターですね!
しかし、「ディズニーランドは好きだけど、ミッキーについてはよく知らない」という方は意外と多いのではないでしょうか。
実は、ミッキーは逆境の中から生まれたキャラクターなのです。今回は、そんなミッキーの意外な誕生秘話と歩んだ歴史をまとめていきます!
ミッキーマウスの誕生秘話
「オズワルド」の存在
ウォルトが初めて作ったキャラクターは、ミッキーではなくオズワルド・ザ・ラッキー・ラビットです。
オズワルドはうさぎのキャラクターで、1927年に盟友アブ・ワークスとともに生み出しました。
いたずら好きなオズワルドを主役にした短編シリーズは26本も制作され、人気のあるシリーズでした。
スタジオの危機
しかし、順調だったのもつかの間、1928年2月、ユニバーサルスタジオ(配給会社ミンツ)との間に金銭トラブルが発生します。
ウォルトと兄(ロイ)は、配給会社からもらうオズワルドの制作資金が一向に上がらず、契約交渉に向かいました。
しかし、ユニバーサル社はユニバーサル社と配給会社ミンツにオズワルドの所有権があるとして、交渉に応じてくれませんでした。
それどころか、さらなる値下げを要求してきたようです。
ウォルトがこれに拒否すると、ミンツは自分の会社で制作しようと、ディズニー社の優秀なアニメーターたちを引き抜いてしまいます。
ウォルトは、自分で手掛けたオズワルドの版権ばかりか、大量のアニメーターと配給会社も失い、会社は厳しい状況に追い込まれてしました。
結局、ウォルトのスタジオに留まったのは、盟友アブ・アイワークスと彼の直接指導を受けたレス・クラークの2人だけでした。
逆境の中で誕生した、「ミッキーマウス」
ニューヨークからロサンゼルスへ戻る列車の中で、兄弟は、オズワルドにかわる新しいキャラクターを生み出す必要があると考えます。
「世界中の人々の心を掴む人気のキャラクターを創りたい」そんな思いからウォルトによって、ネズミのキャラクターが描かれたのです。
その後、アブ・アイワークスの力をかり、共に生み出したのが、「ミッキーマウス」でした。
契約上、制作しなければならないオズワルド作品4本を仕上げる傍ら、
初めは「モーティマーマウス」でしたが、ウォルトの妻リリアンにアドバイスをもらい、親しみやすい「ミッキーマウス」という名前に変更したといいます。
ミッキーマウスが起こした社会現象とは?
次に、ミッキーマウスが主人公の映画を制作することを考えた、ウォルト。
当時、『蒸気船ウィリー』が公開すると、ミッキーマウスは社会現象と言われるほどの人気が高いキャラクターになっていったのです!
映画「蒸気船ウィリー」公開
とはいえ、初めから全てがスムーズだったわけではありません。
ウォルトは、まず、ミッキーマウスを主役にしたサイレントアニメーションを2本制作しますが、配給会社が見つかりませんでした。
丁度そのころ、1927年には世界初のトーキー映画『ジャズ・シンガー』が公開されたことから、ウォルトは「これからの映画には音声が必要だ」とひらめきます。
そして、音声と映像が一致した世界初のトーキ―アニメーション映画への挑戦を決意するのです。
それが、1928年11月28日に公開された『蒸気船ウィリー』であり、ミッキーはこの映画でスクリーンデビューを果たし、大ヒットを記録。
たちまち、当時のアメリカのムービースター、フェアバンクスやチャップリンと並ぶ映画スターになるのです!
当時のミッキー人気を象徴する歌
人々はミッキーマウス目当てに映画館へ行くようになり、ミッキーが上映されないと、その不満を表した歌を歌いました。
「What? No Mickey mouse? What kind of a party is this?」
(なんだって?ミッキーマウスなし?そんなパーティーがあるか?)

歌にまでなっていたなんて、相当な人気ぶり!
相次ぐ商品化
ミッキーは様々な商品の顔になり、街中いたるところに現れるようになります。
倒産しそうだった企業をいくつか救ったという話もあるくらい、小さなネズミが社会現象を巻き起こしたのです。
ディズニースタジオは商品化で得た資金で、次々とアニメーションの挑戦をすることが可能となりました。
アメリカ大恐慌で復活のアイコンに
ミッキーマウスが誕生したのは狂騒の20年代、すぐにアメリカを大恐慌が襲います。
多くの国民が、路頭に迷い、絶望を感じてた時代。また、物価の上昇が影響したことで共働き家庭が増え、日中子どもだけの時間が増えていったのです。
子どもたちのスターに
映画は当時、最も安価な娯楽であったことから、子どもたちの楽しみといったら週に1度、ミッキーマウスの映画を見ること。
「ミッキーマウス・クラブ」というミッキー作品を見る子ども会まで作られる人気ぶりで、ミッキーはみんなの心をつないでくれる存在でした。
大恐慌の復活のアイコン
会社の窮地を救うために生まれたミッキーは、当時のアメリカにとってまさに復活、希望の象徴でした。
「今は苦しいけど、がんばろう。希望をもとう。」と、みんなの心を勇気づけるアイコンとしての役割を担っていたのです。
スターなのに人気が低迷?人気が復活するまでの歩み
「子どもたちのお手本」としてのキャラクターに
アメリカ大恐慌中、多くの子どもたちに大人気となったミッキーマウスは、本来個性があり、自由で冒険だいすきなキャラクター。
しだいに子どもたちの親は、「子どもに悪い影響を与えないでほしい」、「子どもたちのお手本」をミッキーに望んだのです。
その結果、行動に制限がかかり、まじめで、冷静。欠点が許されない、優等生的なキャラクターへと変わらざるをえませんでした。
そこで、登場したのが、ドナルドとグーフィー。
ミッキーに代わって、短気なドナルドが怒り、グーフィーがマヌケ役に徹することで、物語に深みを与えました。
そうすると、しだいに個性的なドナルドやグーフィーの方に人気が高まっていったのです。
人気復活を目指して
映画『ファンタジア』
「ミッキーの人気が押されている状況」を誰よりも案じていたのは、ウォルトでした。
そこで、再びミッキーを主役にするために、短編映画の「魔法使いの弟子」の制作を予定していたそうです。
結果的に、その思いを発端にして、壮大な長編アニメーション映画『ファンタジア』が誕生しました。
作画枚数は、なんと100万枚!
思いむなしく、公開当時の評価は芳しくなく、評価されるまでに時間がかかる作品となりました。
ミッキーマウスのデザインし直し
「ファンタジア」公開以降、ミッキーのデザインを何度も考え直したのは、アニメーターのフレッド・ムーア。
動きをなめらかに、そしてわかりやすく滑稽に描く。その貢献は大きく、ミッキーは、優等生的なキャラクターを脱し、かつての自由な個性をその年発揮できたのです。
混乱の時代
しかし、世界で第二次世界大戦が勃発。
愛国心の強いウォルトは軍からのほとんどの依頼を受け、ミッキーやドナルド、キャラクターを使用したプロパガンダのための短編を制作しました。
キャラクター自身が悪いわけではありませんが、混乱の時代の中で、当時のアメリカの人々の士気を高めるアイコンとしての役割を担っていた歴史ももつのです。
戦後の歩み
テレビへの参入
戦後になると、ウォルトもまたごく普通の生活を好み、質素な生活を送りますが、ミッキーもまた、社会に合わせて落ち着いた家庭的なキャラクターへと変化します。
その後、ウォルトが新しい分野であるテレビへの参入にのりだすと、これを機にミッキーは「人々の生活の一部」として受け入れられ、各家庭から再び人気の勢いを増していきました。
ディズニーランド
その後、ミッキーやキャラクターと直接会える場所として、カリフォニアにディズニーランドの建設が始まります。
この頃には、ミッキーはすっかりウォルトのアイコンとしてのイメージが強くなり、現在も世界中のパークでゲストをお出迎えする顔として活躍しています。
ミッキーが人気の理由を考察
上記のようにミッキーは長い歴史をもち、時代やアメリカ情勢を強く受けつつ、混乱の中でたくさんの経験を積んで変化してきました。
スクリーンデビューしてから100年もの間、人々の心をつかみ、記憶に残り続けています。
最後に改めて、ミッキーが人気な理由を考察してみました。
ウォルト自身の体現であったこと
特に初期の頃のミッキーは、まさしくウォルトそのものだといわれているのをご存じでしょうか。
- 楽天家でいつでも好奇心旺盛な子どものよう。
- 勇敢で、どんなことがあっても負けない、自分の道を突き進む。
- 冒険家で恐れ知らず。
他の企画を進めている時でも、ウォルトの頭の中には、いつでもミッキーがいて、2人は一心同体でした。
声もウォルト自身が務めており、ミッキーは、ウォルトを体現したアイコンとしての役割をもち、記憶に残るのでしょう。
希望を与える存在
ミッキーマウスは、ウォルトとアブのあきらめない心が生んだ絶望の中の「希望」でした。
どん底の中で誕生したミッキーマウスの誕生物語には、希望をもらい、何年たっても人の心をつかみます。
カンペキでない。
「ミッキーは完ぺきではない。しかし、問題が起きた時に、何とかして乗り越えるひらめきをもっているんだ。」と、ドキュメンタリ内で現スタジオメンバーは語ります。
何か問題が起きても、それでもあきらめずにアイディアを出して一生懸命乗り越えようとする。
そんな勇敢なミッキーは、みんなのリーダー的存在として愛される存在ですね!
「小さなネズミ」という意外性
ネズミという小さな生き物が主人公になるという意外性と、その小さくて一生懸命な姿が心をつかまれる理由であると考えます。
「小さなネズミだって、ヒーローになれる。誰でもヒーローになれる可能性がある。」
「できる限りあきらめなければ、常識を覆すことができる」というメッセージを感じます。
時代とともに変化し続けるデザイン。
本来、「キャラクターは変わらないもの」ですが、ミッキーは誕生以来絶えず変化し続けていて、その時代の描き手ごとに味や個性が表現されています。
本質を残し、時代や状況に合わせて、柔軟に変化できるところが魅力です!
まとめ
今回は、意外な誕生秘話とその歩み、人気の理由についての考察をまとめました。
制作者の思いや歴史を知り、キャラクターへの理解が深まると、それまでの見方とは変わって新鮮ですね!
この記事は、「ディズニー+」で配信中の「ミッキーマウス:ザ・ストーリー」をもとに書いた記事です。
ドキュメンタリー内では、歴代のミッキーを一度に見られる、短編『Mickey in a minute (2022)』を見ることができ、おすすめです!
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